エコキュートの省スペース・スリムタイプ(薄型)は、限られた設置スペースや外観への配慮が必要な住宅に適した選択肢です。
しかし、導入に際してはメリットとデメリットを十分に理解することが重要です。以下に、薄型エコキュートの特徴を詳しく解説します。
薄型(スリムタイプ)エコキュートとは?構造と特徴
■ 薄型とは?
一般的なエコキュートが「角型」で奥行きが70cm前後あるのに対し、「薄型(スリムタイプ)」は奥行きが約44~49cm程度と、20~25cmほど薄い形状です。
■ 構造的な違い
薄型タイプは、給湯タンクを縦に2分割または横に広げた設計になっており、壁面や狭小スペースに沿わせて設置できるのが特徴です。
ただし、内部構造が複雑なため、熱効率や安定性に影響する場合があります。
薄型エコキュートのメリット
① 狭小スペースにも設置可能
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奥行きが狭いため、通路側・壁際・住宅の角などにもフィット
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都市部の戸建て、狭い外構スペースでも導入が可能
② 設置に伴う工事コストの削減
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クレーン不要で搬入可能なケースが多く、重機費用や追加工事の削減が見込める
③ 建物外観への配慮
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壁に沿って配置できるため、外観を損なわず景観を保持
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前面道路が狭い住宅でも圧迫感を与えにくい
④ 建築制限のある住宅にも対応
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境界線制限や防火制限などで角型が置けない場所に有効
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建築基準法に基づく「外部設備の配置基準」にも適合しやすい
導入時の注意点とデメリット
① 製品ラインナップが限られる
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薄型モデルは、370Lや460L中心で選択肢が少ない
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高機能モデル(フルオート+自動配管洗浄機能など)は未対応のことも
② 初期コストが高め
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同容量の角型に比べて2~5万円程度高価
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製造工程や特殊構造に起因する価格差
③ 年間給湯保温効率がやや低下
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熱が逃げやすく、角型より効率が2~4%下がる傾向
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例:年間給湯保温効率(JIS値)→角型3.2、薄型3.0
④ 耐震性能に制限がある場合も
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高さと厚みのバランスから、震度7対応の耐震クラスSに未対応なモデルも存在
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地震対策には、強固なアンカー工事が推奨される
⑤ 補助金の対象外の可能性
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補助金制度における「基準効率値」に届かない薄型モデルも一部存在
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自治体や国の制度要項を事前に確認すべき
通常型(角型)との比較一覧
項目 | 薄型(スリムタイプ) | 通常型(角型) |
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奥行き | 約44~49cm | 約70~75cm |
設置性 | 狭小地向き | 一般住宅向け |
製品ラインナップ | 少ない(370~460L中心) | 多い(300~550Lまで) |
価格 | やや高め | 標準的または割安 |
保温効率(JIS値) | やや低め(3.0前後) | 高め(3.2以上) |
補助金対象になりやすさ | 製品により異なる | 多くが対象 |
耐震性能 | クラスA/B中心 | クラスS対応モデルあり |
薄型エコキュートがおすすめな家庭とその理由
適しているケース
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外構スペースに制限がある都市部住宅
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隣家との距離が近く、エアコン室外機と重ならないよう設置したい
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景観規制エリアで、機器が目立たないよう設置したい
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3~4人家族で、370L~460Lの容量が適している
避けた方がよいケース
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大家族(5人以上)や入浴回数が多い家庭
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高効率型を重視し、ランニングコスト重視の方
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地震リスクが高いエリア(特に高層住宅の外構設置)
まとめ:設置環境に合った選択をするために
省スペース・スリムタイプのエコキュートは、設置制限のある住宅には最適な選択肢ですが、コスト・性能面でのトレードオフがあります。そのため、購入時には以下を確認しましょう:
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自宅の敷地と搬入経路の状況
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家族の人数と給湯使用量
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予算と初期投資の回収見込み
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補助金の対象要件や耐震対応レベル
導入前に専門業者や電力会社と十分に相談し、必要であれば現地調査を依頼するのがおすすめです。